第5回 貸借対照表の知識(1)流動資産 その2
(5)受取手形
①約束手形
会社同士の取引では、商品代金の決済のために一定の期日に支払う事を約束した約束手形という証券を相手に渡す。手形を渡す事を「振り出す」と言う。
【ケーススタディ】
A社がB社から約束手形を10万円受取った場合、「受取手形10万円」と記帳される。反対にB社が約束手形を10万円振り出した場合、「支払手形10万円」と記帳される。手形の振出人(支払者)はB社で、名宛人(受取人)はA社となる。
②為替手形
約束手形の処理は当事者が二人の時である。取引の当事者が三人の時は為替手形を使う。
【ケーススタディ】
A社の売掛金がB社に対して10万円あり、A社の買掛金がC社に対して10万円ある時、A社はB社より10万円を回収してC社に10万円支払うと手間が掛かる。その為、B社からC社へ10万円を支払って貰う時に為替手形を使用する。但し、A社はB社の承認を得る必要がある。承認が得られれば、為替手形をC社に振り出す事により、B社が手形の金額である10万円をC社に支払う事になる。
「為替手形の用語」
引受 : 為替手形を振り出す時に、相手に承認を得る事。(B社)
振出人 : 約束手形と同様手形を振り出す人。(A社) ※約束手形との相違点は、振出人が手形金額を支払わない点。
名宛人(支払人、引受人) : 手形金額を支払う人。(B社)
受取人(指図人) : 手形を受取る人。(C社)
次の図は、A社(振出人)・B社(名宛人)・C社(受取人)の関係を示したものである。
③割引手形と裏書譲渡
もし、銀行の預金口座の残高が不足し、約束手形や為替手形の決済ができなければ不渡りとなる。不渡りが半年間で2度続くと銀行との取引ができなくなり、「取引停止処分」を受け、会社は事実上倒産となる。
会社では、短期的な資金調達の為に受取手形を銀行に譲渡して換金するか、受取手形を取引先の会社に譲渡して買掛金の支払代金とする方法がある。
割引手形 : 受取手形を銀行に譲渡して換金する事。 ※割引手形は、手形の売却と考え、銀行へ支払う割引料は「手形売却損」として勘定処理する。
裏書譲渡 : 受取手形を買掛金の決済等の為に、取引先へ譲渡する事。
④手形の遡及義務 (遡及:ある時点までさかのぼる事)
取引先の会社から決済が受けられなくて、受取手形が不渡りになった場合の処理は、「不渡手形」勘定に切り替えられる。こうなると「不良債権」となり、支払いが長期に渡る。
【ケーススタディ】
A社が振り出した支払手形を、B社が割引や裏書した後、A社が倒産して不渡りになった。取引先の倒産等により受取手形が決済されない場合には、B社は責任を免れる事はできない。取引先の倒産のように、将来一定の条件下で起こり得る潜在的な債務を偶発債務と言う。